不動産経営を行うオーナー様や管理会社様を大きく悩ませるのが、入居者トラブルの対応ではないでしょうか。
水漏れやトイレのつまり、設備不良などは24時間いつ起こるかわからず、緊急時はすぐに対応しなければさらなるトラブルに繋がりかねません。
また、契約を守らない入居者様や、騒音・モラルの問題など他の入居者様を巻き込んでしまう入居者様同士のトラブルも、物件の評判や入居者様の満足度に影響を与えます。
できるだけ穏便に済ませたいですが、実際直面すると対応に困ってしまうものです。
この記事では、不動産経営に起こりがちな入居者トラブルと、入居者様同士のトラブルが起こった際の対応方法についてご紹介します。
目次
入居者トラブルってどんなものがある?
設備のトラブル
水漏れ
水漏れは設備の劣化や水を出しっぱなしにしていたなど、設備不良や入居者様の過失が原因でおこります。
水漏れが悪化すれば、他の階の入居者様に迷惑がかかることもあるため、すぐに業者手配を行うなど早急な対処が必要となります。
トイレのつまり
トイレのつまりは一度に紙を流しすぎている、流せないものを流してしまったなど、原因は様々です。
入居者の部屋のみでのつまりならまだしも、共用部分がつまり建物全体に被害が出てしまうと早急な対応や入居者様全員へ伝えなくてはならないなど、大きな負担が予想されます。
鍵
鍵を失くした、開かない、顔認証システムのエラーなどで、部屋に入れない・外出できないというトラブルもあります。
エントランス部分にオートロック式の入り口がある物件の場合は、他の入居者様にも影響が及ぶこともあるため注意が必要です。
騒音トラブル
騒音は、入居者様同士のトラブルで最も多い問題です。
子供の足音や大音量の音楽、夜中の洗濯機・掃除機の音、ドアの開け閉めがうるさい、夜遅くまで騒いでいるなど、様々な理由で騒音トラブルが発生します。
騒音トラブルは、お互いの主張に食い違いが生じやすく、上の階がうるさいという主張でも実は下の階が起因だったり、騒音を主張している入居者様が過剰に反応しすぎだったりする場合もあるので、対応が難しいという現状にあります。
ベランダのトラブル
ベランダで喫煙をしている入居者様のタバコのにおいや煙が、風の影響で他の入居者様の室内に入り込んでしまうことがあります。
また、ベランダのゴミが臭い、BBQをしている人の炭のにおいなど、洗濯物への臭い移りや子供への影響を心配される入居者様から、クレームの連絡がくることもあるのではないでしょうか。
他にも、上階のベランダで干した布団がはみ出して日差しが遮られる、布団叩きのホコリが舞って迷惑。下着姿で過ごしていて不快といったクレームが考えられます。
ゴミ出しのマナートラブル
ゴミの出し方が汚い、分別できていない、ゴミ出し日や時間を守ってもらえないという、ゴミ出しのマナートラブルも発生します。
ゴミ出しマナーを守らないと、ゴミ置き場に虫が発生、建物が腐食するなど不衛生になるばかりか、ゴミが動物に荒らされたり放火の危険性があったりと治安の面でも心配です。
ペット問題
ペット不可物件の場合は、隠れてペットを飼っているだけで問題となります。
また、ペット可物件であっても、鳴き声や臭いで他の入居者様に迷惑をかけていたり、ペットの抜けた毛が共用スペースにおちてしまったりと、トラブルに発展することも少なくありません。
駐輪場・駐車場トラブル
車やバイク・自転車が、契約しているスペースに無断で停めてある、ラインをはみ出して停めてあり迷惑、駐車場で子供が遊んでいる、車に傷を付けられたなどのトラブルがあります。
大きな事故や責任問題に発展することもありますので、場合によっては警察に相談するなどの対処も必要となります。
共用部のトラブル
エントランスやエレベーター、郵便受けといった、集合住宅の共用部分トラブルもあります。
火災報知器が鳴りやまない、エレベーターが動かないなどの設備トラブル、ごみのポイ捨てや不要な郵便物の投棄、廊下に私物が置いてある、乱暴な使い方をしている入居者様がいるなどのクレームへの対処が必要となります。
また、あいさつをしたのに無視をされたなどの不満や不快感が、他のトラブルに発展することもあるため注意が必要です。
被害妄想
嫌がらせをされている、物が盗まれたなど、そのような事実はないにもかかわらず、一方的な思い込みや勘違いから被害妄想を抱いた入居者様や近隣住民から、嫌がらせの被害を受けてしまうといったトラブルも発生します。
お互いの主張をしっかり聞き入れて、対処を行いましょう。
家賃滞納
家賃滞納も、オーナー様を悩ませる問題です。
家賃滞納が発生すると、空室が生じているのと変わらない状態になってしまいます。催促を行ってもすぐに支払ってもらえないケースも多く、数か月、数年単位で滞納されて困っているオーナー様も多いようです。
早めに請求書や催促状の送付を行い、支払い交渉を行いましょう。
入居者トラブルを放置するデメリット
入居者トラブルを改善するには時間と手間がかかるため、放置しておいたら解決するのではないかと思ってしまいがちです。
しかし、放置してしまうと様々なデメリットが生じてしまうため、早い段階で対処を行う必要があります。
物件の評判が落ちる
トラブルへの対応の悪さが口コミとなると、物件自体の評判が下がってしまうこともあるため注意しておきましょう。
評判が落ちることで、空室が増え、家賃を下げなければならないという悪循環へ陥ってしまいます。
放置するのではなく、早めに対応することが重要です。
問題が長期化することで解決が難しくなる
問題が小さいうちだと比較的簡単な対処で解決しますが、問題が習慣化・長期化することで、解決が難しくなることがあります。
長期にわたって解決されなければ、他の入居者にオーナー側が迷惑行為を認めていると捉えられてしまう可能性もあるため注意しましょう。
サイレントクレーマー・退去者の増加
クレームの連絡をしてきた入居者様が1人であっても、実は他の入居者様も連絡をしていないだけで、我慢しているという場合もあります。
オーナー側がトラブルに対応できていないことで、入居者様の満足度が下がってしまい退去者が増え、気づいたら空室が増加してしまっていたという問題が発生することもあるのです。
オーナーや管理会社が責任を問われる
入居者トラブルに適切な対処を行わなければ、損害賠償請求が認められる場合もあります。
実際に裁判になった例もあり、住環境としての損害や精神的損害への慰謝料を支払わなければならなくなったという事態に陥ってしまうこともあるので注意が必要です。
入居者同士のトラブルの対応方法
ここからは入居者同士のトラブルの対処法についてご紹介します。
不動産経営を行う上で、入居者同士のトラブルは避けては通れない問題です。しっかりとした状況把握と、柔軟な対応が求められます。
①事実確認
まずは、連絡をくれた入居者様の話をしっかりと聞いて事実確認を行いましょう。
トラブルを起こしているとされる入居者様が確実にその人であるのか確認しておくことも大切です。勘違いや人違いの可能性もあるため、細かな状況把握を行います。
②入居者様全員に周知
まずはトラブルに関する文書の配布や掲示板への掲載を行い、入居者様全員にクレームがあることを周知しましょう。
他の入居者様にも気を付けようと意識してもらうことができますし、オーナー側がしっかり対処中であるという旨を知ってもらうことにも繋がります。
③ヒアリング、注意を行う
トラブルの原因となっている入居者様へもヒアリングを行い、事実を正確に把握しましょう。
トラブルに気づいていなかった場合やルールを知らなかったという場合もあるため、まずはやわらかい口調で注意を行います。一度注意すれば改善してもらえる場合も多いです。
対応後は、連絡をくれた入居者様にも対応内容を通知しておきましょう。
④内容証明を送る
注意を行っても改善が見られない場合は内容証明を送り、改善されなければ契約を解除、訴訟も辞さないとする旨を伝えます。
内容証明は、トラブルを起こしている入居者様へ心理的な効果が期待できます。また、公的に送ったと記録が残るため、万が一訴訟になった場合にも役立てることが可能です。
⑤強制退去を検討する
それでも改善せず、何度もトラブルを再発させてしまったり、悪質な嫌がらせとなり他の入居者様に悪影響を与えたりしている場合は、迷惑行為を続ける入居者様に退去の依頼をすることとなります。
いきなり強制退去の申し出を行うと、経営者側が罪に問われてしまう恐れもあるため、入居者様の退去依頼は段階を踏んで行動に移すことが大切です。
入居者退去の方法
合意のもと解約
迷惑行為が改善されないならば退去してもらうという旨を伝え、まずは話し合いでの解決を試みましょう。
もちろん素直に明け渡してくれる入居者様ばかりではないため、場合によっては交渉材料として立ち退き料の支払いを申し出る必要もあります。ただ立ち退きは、正当な理由がなければ申し出ることはなかなか難しい、ということも頭に入れておかなければなりません。
腑に落ちないこともあるかもしれませんが、退去後のトラブルを未然に防ぐためには合意のもと退去してもらうのが望ましいです。
弁護士へ相談する
迷惑行為を行う入居者様に話を聞き入れてもらえない場合でも、第三者の弁護士が介入することで相手も退去に応じてくれる可能性があります。
弁護士へ相談する際は、入居者トラブルの対処が得意な弁護士に依頼を行うと、入居者トラブルへのアドバイスをもらいやすいです。万が一法的な対応が必要となった場合にも、相談できる弁護士がいると安心できるため、信頼できる弁護士事務所を見つけておきましょう。
訴訟にて強制解約をさせる
迷惑行為を行う入居者様がどうしても退去に応じない場合は、最終手段として訴訟にて強制解約をする方法もあります。
裁判で強制退去を認めてもらうためには、迷惑行為の証拠が必要ですので今までの証拠はしっかり押さえておきましょう。
裁判で強制解約の許可をもらえれば、同意がなくても追い出すことができるようになります。
ただ、裁判となると時間も費用もかかるため、強制解約は最終手段です。出来るだけ合意での解約ができるよう交渉を行いましょう。
入居者トラブルを避けるための対策
入居時に入居者審査を行う
入居時はだれでも入居させるのでなく、事前に入居者様の審査を行うことでトラブルを避けることができます。
家賃の支払い能力はあるのか、年収や勤続年数などを考慮した上で判断し、人柄や応対の時の態度も参考にしましょう。
連帯保証人の確保
家賃の滞納に備え、連帯保証人を立てておくことも大切です。
連帯保証人は家賃滞納の抑止効果もありますし、もしもの場合は代わりに支払ってもらうことができます。また、契約時に敷金をもらってくことも、トラブルが起きた際に役立ちます。
契約時にしっかりと説明を行う
契約時に禁止事項やトラブル時の対応をしっかりと説明しておくことで、知らずにトラブルを起こしていたということを防ぐことができます。
他物件で実際起きたトラブルの事例を踏まえて説明しておくことも、入居者様が意識するきっかけとなるのではないでしょうか。
こまめな物件管理
定期的に物件を見回り、清掃を行っておくことも入居者トラブルを事前に防ぐ方法として効果的です。
ゴミが散乱していたり物件の雰囲気が悪かったりするとモラルの低下も起きやすく、マナー違反や契約違反などのトラブルにつながってしまうこともあるでしょう。
入居者様と管理側が顔を合わせることも増えるため、コミュニケーションを日ごろから大切にしておくことで、大きなトラブルに発展する前に対処が可能となります。
お客様対応窓口の設置
入居者様が何でも相談できるお客様窓口を設置しておくことも大切です。
早期に解決することができ、トラブルの報告をまとめ対応履歴として残しておくことができるので、トラブルを繰り返すこともなくなります。
専門家に対応してもらおう
入居者トラブルが悪化して弁護士に依頼する前に、代行業者へ委託を検討するという方法もあります。
代行業者の中には、弁護士と連携を行っている会社もあり、もしもの場合も安心して任せることが可能です。
自らお客様窓口を設置する必要がなく、入居者様とのやりとりを代行して行ってもらえるため、対応で頭を悩ませることも減るのではないでしょうか。
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まとめ
入居者トラブルは、不動産経営を行っていればどうしても起こり得る問題です。
大切なことはトラブルが起きた際に放置せずすぐに対応し、入居者様を安心させてあげることではないでしょうか。
どうしても迷惑行為を繰り返してしまう入居者様がいる場合は、心を鬼にして退去の申し出を行う必要もあります。
建物全体の入居者満足度を向上するためにはどうするべきかを考えて、対応していくことが重要です。